マルチプロセッサとは?CPUの並列処理で実現する高性能コンピューティングの仕組みを解説

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コンピュータの処理性能を向上させる重要な技術の一つが「マルチプロセッサ」です。本記事では、基本情報技術者試験でも頻出のマルチプロセッサについて、その仕組みや種類、応用例まで詳しく解説します。複数のCPUを活用して高性能な処理を実現する方法を、試験対策に役立つポイントとともに学んでいきましょう。

マルチプロセッサの基本

マルチプロセッサは、複数のCPU(中央処理装置)を搭載したコンピュータシステムのことです。CPUの数を増やすことで、処理能力を向上させることができます。一方、複数のプロセッサが相互接続ネットワークを介して接続されているシステムは「マルチコンピュータ」と呼ばれます。マルチコンピュータは、プロセッサ間でメッセージのやり取りが可能であるため、タスクを分割して処理することができます。そのため、分散コンピューティングに利用することができます。マルチコンピュータは、マルチプロセッサに比べて構築が容易で費用対効果が高いという利点があります。

マルチプロセッサの目的

マルチプロセッサの目的は、システムの実行速度を向上させることです。他の目的としては、耐障害性とアプリケーションマッチングがあります。マルチプロセッサは、1つのプロセッサに障害が発生した場合でも、他のプロセッサがその役割を引き継ぐことができるため、耐障害性に優れています。

マルチプロセッサの種類

マルチプロセッサは、CPU間の接続方法によって、大きく2つの種類に分けられます。

密結合マルチプロセッサ

密結合マルチプロセッサは、複数のCPUが主記憶装置や入出力装置を共有する方式です。CPU間の通信速度が速いため、高い処理能力を実現できます。密結合システムは、複雑さを抑えることを目的としたシンプルなシステムに適しています。しかし、通信速度を優先する一方で、システムの拡張性はやや制限されます。

密結合マルチプロセッサの特徴

密結合マルチプロセッサでは、プロセッサメモリ間ネットワーク(PMIN)、入出力プロセッサ間ネットワーク(IOPIN)、および割り込み信号ネットワーク(ISIN)の3種類のネットワークが使用されます。PMINは、プロセッサとメモリ間のデータ転送に使用されます。IOPINは、プロセッサと入出力デバイス間のデータ転送に使用されます。ISINは、割り込み信号の伝達に使用されます。これらのネットワークにより、CPU間の高速な通信が実現されます。

共有メモリ型マルチプロセッサ

すべてのCPUが同一のメモリ空間を共有する方式です。データの共有が容易であるため、並列処理に適しています。

均衡型マルチプロセッサ

各CPUがそれぞれ専用のメモリを持ち、高速な相互接続ネットワークで接続された方式です。CPU間の通信オーバーヘッドが低いため、高い処理能力を実現できます。

疎結合マルチプロセッサ

疎結合マルチプロセッサは、複数のCPUがそれぞれ独立した主記憶装置や入出力装置を持つ方式です。CPU間の通信速度は遅くなりますが、システムの拡張性が高いというメリットがあります。疎結合は、柔軟性、スケーラビリティ、および保守性がより重要な、より大規模またはより複雑なシステムに適しています。疎結合マルチプロセッサでは、各プロセッサが独自のメモリを持ち、メッセージ転送システムネットワークを介して接続されます。メッセージ転送システムは、共有メモリシステムに比べて通信速度が遅いため、データレートが低くなります。タスク間の相互作用の度合いが低く、プロセッサとI/Oデバイス間の直接接続があり、分散コンピューティングシステムでの応用があります。拡張性を優先する一方で、CPU間の通信速度は密結合システムに比べて遅くなります。

分散メモリ型マルチプロセッサ

各CPUがそれぞれ専用のメモリを持ち、ネットワークで接続された方式です。システムの拡張性が高く、耐故障性に優れています。

メッセージパッシング型マルチプロセッサ

CPU間でメッセージを交換することで通信を行う方式です。柔軟なシステム構成が可能ですが、プログラミングが複雑になるというデメリットがあります。

マルチプロセッシングオペレーティングシステム

マルチプロセッシングオペレーティングシステムは、複数CPUの利用を前提としたOSです。各CPUにタスクを割り当て、並列処理を行うことでシステム性能を向上させます。すべてのCPUは周辺機器、コンピュータバス、物理メモリ、クロックに接続され、OSによって各CPUへのリソース割り当てが管理されます。これにより、リソースの効率的な利用とパフォーマンスの向上が実現します。

マルチプロセッサの応用分野

マルチプロセッサは、様々な分野で応用されています。

科学技術計算

気象予測、創薬、流体力学シミュレーションなど、膨大な計算を必要とする分野で利用されます。共有メモリ型マルチプロセッサは、データ共有が頻繁に行われるため、このような用途に適しています。

データベース処理

オンライン取引処理、データウェアハウスなど、大量のデータを高速に処理する必要がある分野で利用されます。

画像処理

医療画像診断、顔認識、画像編集など、画像データを処理する分野で利用されます。

人工知能

機械学習、深層学習、ロボット制御など、高度な人工知能技術を必要とする分野で利用されます。メッセージパッシング型マルチプロセッサは、複雑な情報をやり取りする必要があるため、このような用途に適しています。

関連技術

クラスタリング

クラスタリングは、複数のコンピュータをネットワークで接続し、1台のコンピュータのように動作させる技術です。クラスタリングを利用することで、システムの可用性や処理能力を向上させることができます。クラスタリングは、高性能と信頼性を必要とする環境に最適です。クラスタ内のコンピュータは、多くの場合、同様のハードウェアとOSを持ちますが、異なるシステムを含むことも可能です。また、通常は単一の場所または複合施設に配置されます。リソースは、集中型リソースマネージャによって管理されます。クラスタリングは、WebLogicアプリケーションサーバー、データベースなどで使用されます。

​​ロードバランシング

ロードバランシングは、複数のコンピュータに負荷を分散させることで、システム全体の処理能力を向上させる技術です。例えば、Webサーバーを複数台用意し、アクセスを分散させることで、1台のサーバーに負荷が集中することを防ぎ、安定したサービスを提供することができます。

フェイルオーバー

フェイルオーバーは、1台のコンピュータに障害が発生した場合、他のコンピュータがその役割を引き継ぐことで、システムの可用性を維持する技術です。例えば、データベースサーバーを2台用意し、1台が故障した場合でも、もう1台が自動的に処理を引き継ぐことで、サービスを停止することなく運用することができます。

グリッドコンピューティング

グリッドコンピューティングは、地理的に分散した複数のコンピュータをネットワークで接続し、1つの巨大なコンピュータのように利用する技術です。グリッドコンピューティングを利用することで、大規模な計算処理やデータ解析を行うことができます。グリッドコンピューティングは、大規模な距離にわたって多様なリソースを利用することで、柔軟性とスケーラビリティを提供します。グリッドを構成するコンピュータは、異なるオペレーティングシステムを実行し、異なるハードウェアを持つことができます。各ノードは自律的であり、いつでもオプトアウトできます。グリッドコンピューティングは、予測モデリング、自動化、シミュレーションなどで使用されます。

エッジコンピューティング

エッジコンピューティングは、データの発生源に近い場所でデータを処理する技術です。従来のクラウドコンピューティングでは、データセンターにデータを転送して処理していましたが、エッジコンピューティングでは、データが発生した場所で処理を行うため、レイテンシを削減し、リアルタイム処理能力を向上させることができます。エッジコンピューティングを利用することで、リアルタイム性が求められる処理や、ネットワーク帯域幅を節約することができます。エッジコンピューティングには、レイテンシの削減、スケーラビリティの向上、データセキュリティとプライバシーの強化、リアルタイム分析、コスト削減など、いくつかの利点があります。エッジコンピューティングは、1990年代に起源を持つ革新的なタイプの計算であり、集中型データセンター間でルーティングするのではなく、データのローカル処理とストレージを可能にします。

練習問題

  1. 密結合マルチプロセッサと疎結合マルチプロセッサの違いを説明してください。
  2. クラスタリングとグリッドコンピューティングの違いを説明してください。
  3. エッジコンピューティングのメリットを3つ挙げてください。

練習問題の解説

問1の解答

密結合マルチプロセッサは、複数のCPUが主記憶装置や入出力装置を共有する方式です。CPU間の通信速度が速いため、高い処理能力を実現できます。一方、疎結合マルチプロセッサは、複数のCPUがそれぞれ独立した主記憶装置や入出力装置を持つ方式です。CPU間の通信速度は遅くなりますが、システムの拡張性が高いというメリットがあります。

問2の解答

クラスタリングは、複数のコンピュータを同一の場所に配置し、高速ネットワークで接続することで、1台のコンピュータのように動作させる技術です。高性能と信頼性を必要とする環境に最適です。一方、グリッドコンピューティングは、地理的に分散した複数のコンピュータをネットワークで接続し、1つの巨大なコンピュータのように利用する技術です。柔軟性とスケーラビリティを提供します。

問3の解答

エッジコンピューティングのメリットは、以下の3つです:

  1. レイテンシの削減:データを発生源に近い場所で処理するため、データの転送にかかる時間を短縮できます。
  2. ネットワーク帯域幅の節約:データを発生源で処理するため、ネットワークに流れるデータ量を削減できます。
  3. セキュリティリスクの低減:データを外部に送信することなく、ローカルで処理するため、セキュリティリスクを低減できます。

まとめ

今回は、マルチプロセッサについて解説しました。マルチプロセッサは、複数のCPUを搭載することで処理能力を向上させるシステムです。CPU間の接続方法によって、密結合型と疎結合型に分類され、それぞれにメリットとデメリットがあります。また、マルチプロセッサは、科学技術計算、データベース処理、画像処理、人工知能など、様々な分野で応用されています。

さらに、マルチプロセッサに関連する技術として、クラスタリング、グリッドコンピューティング、エッジコンピューティングについて解説しました。これらの技術は、それぞれ異なる目的や特徴を持っており、様々な分野で利用されています。

マルチプロセッサは、基本情報技術者試験で頻出のテーマです。この記事で学んだ内容をしっかりと理解し、試験に臨んでください。​​​​​​​

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まけまけ
まけまけ
フルスタックエンジニア
会社の研修でpythonを勉強し始めました。
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